スポーツ医学・関節センター

膝関節の疾患と鏡視下手術

膝関節

膝関節は人体で最も大きな関節であり、大腿骨、脛骨、膝蓋骨がありそれぞれ関節面を持っています。膝関節の安定性を主に担っているのは靭帯であり、前十字靭帯、後十字靭帯、外側側副靭帯、内側側副靭帯などがあります。大腿骨と脛骨の間にはクッションの役割を担う半月板があります。半月板は内側および外側にあり、荷重を分散、吸収する働きと関節の安定性を増大させる働きをしています。(図1.2.3.)

これから、当院で行っている膝関節に対する鏡視下手術について疾患ごとに説明します。

図1:正面図
図2:側面図
図3:右ひざの半月版

半月板損傷

膝関節の大腿骨と脛骨の間に、体重が伝達される衝撃を和らげるクッションの働きをする半月板があります。内側と外側に二つあり、形態はアルファベットのCの形をしています。これにスポーツや外傷などで膝を捻ったりして強い外力が加わると半月板が切れてしまうことがあります。

半月板の切れ方や切れた部位によって、縫って治癒する場所と縫っても治らない場所があるため、縫って治癒することが期待できる切れ方と部位であれば縫合して治します(半月板縫合術)が、損傷の状態によっては縫っても治る可能性が低い場合は、縫合では無く半月板切除という方法をとります。半月板はクッションの働きを持っているので、できるだけ残すほうが望ましいと考えられています。しかし、残念ながら縫合できる切れ方である確率は低く、10%程度です。半月板縫合術も半月板切除術も、膝の前面に約4mm程度の皮膚切開を2ヶ所作り、片方から関節鏡を入れて観察し、もう片方から鏡視下手術用の器具を入れて半月板に対する処置を行います。関節鏡を用いる鏡視下手術により小さな傷で手術を行うことできます。傷が小さいために術後の回復も早く低侵襲な手術であると考えられています。縫合術の際には追加の皮膚切開が必要になることもあります。

術後のスポーツ復帰に関してはリハビリが非常に重要です。半月板損傷直後から筋力が低下していますので、術後にこの筋力低下を正常の状態に戻し、安定性、持久性などを高めるトレーニングを十分行ってからスポーツ復帰することが重要です。

前十字靭帯損傷

膝の動きを支持する機構の中で特に重要なもののひとつに前十字靭帯があります。この靭帯は膝の中央部に位置し、脛骨の前方向への動きと内旋を制動する重要な働きを持っています。主にスポーツ時の切り返し動作や着地の動作、あるいは相手との衝突などの外力により損傷します。受傷頻度の多いスポーツとして、バスケットボール、バレーボール、サッカー、体操、スキーなどがあげられます。

前十字靭帯が切れた状態で運動をすると、時々膝が抜けるような感じや膝がはずれる感じ、いわゆる“ひざ崩れ”といった症状が起こることがあります。これは前十字靭帯の制動機構が働かないために、非生理的で異常な関節の動きが出てしまっていることが原因と考えられます。

この状態を放置して運動を継続すると、半月板損傷や関節軟骨損傷などの二次的損傷を高率に起こし、将来的な関節の変形が進行しやすいと考えられています。日常生活でも膝の不安定性の強い方や、今後もスポーツを定期的に継続して行いたいという方は前十字靭帯再建術で正常な膝関節機能を再獲得してスポーツ復帰されることをお勧めします。

前十字靭帯の手術は、切れた靭帯を縫い合わせるという方法ではなく、自分の体の他の部分から腱組織を持ってきて、新たに靭帯を作り直す“靭帯再建術”を行います。再建術に使うのはハムストリング腱と言う大腿後面の膝を曲げる筋肉から取る方法と膝前面の膝蓋腱という腱を用いて行う方法などがあります。靭帯を再建する際に関節鏡を用いて関節内の操作をサポートすることにより、手術の傷を小さくすることが可能であり、正常な筋肉への傷害を最小限に抑えられる利点があります。手術侵襲を最小限にすることにより、スポーツ復帰に関しても早く回復できるメリットがあると我々は考えています。

靭帯再建手術には様々な方法がありますが、我々はできるだけ解剖学的に正常の靭帯に近い形で靭帯再建を行うことを目的として、解剖学的二重束再建術を行っています。この方法は、大腿後面のハムストリング腱を採取して、これを用いて二本の束を作って、それぞれを本来の解剖の位置に近いように別々の骨孔に通し再建する方法です。再建された靭帯は徐々に成熟して本物の靭帯に近い状態になりますが、成熟するのには時間がかかることが知られており、再建靭帯組織が成熟するのに約2年かかると考えられています。

前十字靭帯手術においてもリハビリは非常に重要です。前十字靭帯損傷を受傷されますと受傷早期から下肢の筋萎縮、筋力低下がみられることが多くみられます。術前からリハビリを行い、手術までに関節の動く範囲を正常な状態に戻し、また筋力を少しでも正常に近い状態に戻しておくことが必要です。術後にもリハビリを行い、定期的に筋力評価をして、筋力の回復状態を確認し、時期に応じて強度を調整したトレーニングを行います。最終的にそれぞれのスポーツに必要な膝の安定性、俊敏性、持久性などを高めるトレーニングを行い、競技復帰を目指します。

離断性骨軟骨炎  

離断性骨軟骨炎は思春期に多く見られる関節軟骨の疾患であり、骨軟骨が母床から徐々にはがれるものです。原因については諸説があり、まだ不明な点が多く残っていますが、原因のひとつとしてスポーツなどによる繰り返される微小な外力の関与があり、一種の疲労骨折と考えられています。

治療は、疾患の時期により治療法が異なります。軽症であればまずはリハビリ、安静といった保存治療を行うことにより改善が期待できますが、重症となると長期間スポーツを休止しても治癒が期待できません。レントゲン、MRI検査などで軟骨が剥がれた状態になっていると手術治療が必要になります。手術治療は、関節鏡視下に行います。鏡視下に軟骨の状態を確認し、まだ軟骨の剥離が軽度であれば骨髄に向かってドリルで穴を開ける治療を行います。軟骨がすでに剥離してしまっている、あるいは剥離する寸前の状態である場合には軟骨を元あった場所に再び生着させなければならないので、元の位置に戻した上で固定する手術を行います。軟骨が広範囲に欠損している重症な場合には追加手術として軟骨移植術などを行わなければならないこともあります。軟骨の修復には時間がかかるため、術後に一定の期間中は松葉杖を用い体重をかけないようにすることも必要となります。

脛骨高原骨折

脛骨高原骨折とは、転倒、転落、交通事故などにより膝関節に外力が加わり起こる関節内の骨折です。膝関節の中でも体重を伝達しなければならない部分であるため、できるだけ正確に関節面の骨折部を元の状態に戻さなければいけません。関節鏡視を用いて関節面を見ながら、骨折部をより正確に戻すことが可能となります。

関節拘縮に対する受動術

外傷や手術後などに関節の動きが制限されるようになることを関節拘縮と呼びます。膝関節の中は連続した空間であり、ここに癒着が生じると関節可動域が制限されます。関節鏡視下手術によりこの内部の癒着を剥がし、リハビリを行うことにより関節に正常の動きをもたらします。

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