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ふなせいトピックス一覧

2026.01.30

ふなせいコラム:膝

 

人工膝関節全置換術後のリハビリテーション

本稿では、当院における人工膝関節全置換術後のリハビリテーションについて紹介します。 (人工膝関節全置換術の手術についての概要はこちらから)   当院の解説 船橋整形外科病院は千葉県船橋市に所在し、”整形外科における専門医療の実践”を柱とした整形外科専門病院です。手術件数などの詳細はこちらをご確認ください。     目次 1. 人工膝関節全置換術とは?手術の概要と目的 2. 術後リハビリテーションの目的と重要性 3. 入院リハビリテーションスケジュール 4. 当院のリハビリテーションの特徴 5. さいごに   1. 人工膝関節全置換術とは?手術の概要と目的  人工膝関節全置換術は、変形性膝関節症、関節リウマチ、大腿骨内顆骨壊死などによって膝関節が損傷・変形し、強い痛みや関節の動きの制限、不安定性が生じ、日常生活に支障をきたしている場合に行われる外科的治療法です。  『変形性膝関節症 診療ガイドライン2023』では、人工膝関節全置換術は膝関節の疼痛軽減、可動域および支持性の改善を通じて、日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)および生活の質(QOL:Quality of Life)の向上に有効であることが示されています1)。   2. 術後リハビリテーションの目的と重要性  術後のリハビリテーションは、人工膝関節の手術を受けたあとの膝の動きや筋力を回復させ、日常生活を安全かつ快適に送るために欠かせない取り組みです。具体的な目的と重要性は以下のとおりです。 1) 術後炎症症状の軽減  人工膝関節の手術を受けたあとには、膝の腫れ・熱感・赤みといった炎症の症状がよくみられます。これらは、痛みを強め、膝の動きを制限し、太ももの筋力を低下させるなど、回復を遅らせる要因となります。この炎症を早く落ち着かせるためには、手術直後からの軽い筋肉の収縮運動(図3)が効果的とされています。軽く筋肉を動かすことで、血液やリンパの流れが良くなり、炎症のもととなる物質の排出が促されます。  実際に、Loydらの研究では、手術後にみられる腫れ(腫脹)の程度が、6週後の筋力や歩行能力の回復に影響することが報告されています2)。また、Paravlicらの研究によると、炎症が落ち着いても筋力の回復には時間がかかり、最大の回復までに6か月以上を要するとされています3)。  そのため、術後早期に炎症を適切に抑え、痛みや腫れによる筋力低下を防ぎながら、軽い運動を安全に始めることが、長期的な回復を遅らせないための重要なポイントになります。  当院では、手術の翌日から安全に配慮した軽い運動を開始し、炎症を抑えながら体の回復を促すリハビリテーションを行っています。 図3. 大腿四頭筋セッティング(タオルつぶし)   2) 術後合併症の予防  人工膝関節の手術を受けたあとは、血のかたまり(血栓)ができてしまう「深部静脈血栓症」や、それが肺に移動して起こる「肺塞栓」、また「感染」や「関節が硬くなる(拘縮)」といった合併症が起こりやすくなります。こうした合併症を防ぐために、リハビリはとても大切です。特に、手術から24時間以内にリハビリを始めることが推奨されています4)。  早めに足の運動や歩行練習を行うことで血流がよくなり、血栓が生じるリスクを減らすことができます。また、肺に血液がたまらないようにし、呼吸のトラブルを防ぐことができます。実際に、世界的なリハビリのガイドラインでも、早期にリハビリを始めることが合併症の予防や回復の早さにつながると示されています4)。  当院では、安全に十分配慮したうえで、手術の翌日から軽い運動を少しずつ開始します。無理のない範囲で体を動かすことで、合併症を防ぎ、安心して回復できるようサポートしています。   3) 筋力および関節可動域の回復・維持  人工膝関節の手術のあとには、太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の力が一時的に弱まり、膝の曲げ伸ばしが制限されることがあります。これにより、歩くことや階段の上り下りが難しくなることがあります。そのため、早い時期からのリハビリテーションがとても大切です。特に、軽い負荷をかけて行う「筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)」を取り入れることで、筋力や関節の動きを取り戻しやすくなり、痛みの軽減や生活の質の向上につながることがわかっています。  こうした運動は、手術後12週間以内に開始することで、より高い効果が得られることが報告されています5)。手術後には一時的に筋力が低下しますが、リハビリテーションを継続することで筋力は徐々に回復することが報告されています6)。  当院では、術後早期から安全に配慮しながら、足のトレーニングや膝の曲げ伸ばしを段階的に行うプログラムを実施しています。筋力を強くしながら柔軟性も高め、スムーズに日常生活へ戻れるようサポートしています。  図4 膝関節に対するリハビリテーションの様子   図5. 膝曲げ伸ばし運動(セルフエクササイズ例)   4) 日常生活活動 (ADL) の再獲得と生活の質 (QOL) の向上  人工膝関節の手術を受けたあとには、歩く・立ち上がる・階段の上り下りといった動作が一時的に難しくなることがあります。これらの動作を少しずつ取り戻していくことは、安心して自立した生活を送るための大切なステップであり、生活の質(QOL)の向上にもつながります。リハビリテーションでは、痛みや関節のこわばりを抑えながら、動きの安定性や筋力を徐々に回復させ、日常の動作を一つひとつ取り戻していきます。研究でも、術後に行う運動療法が、数か月以内に歩行や階段昇降などの能力を改善し、生活の質を高める効果があることが示されています7, 8)。  当院では、入院中から患者様一人ひとりの回復の段階に合わせて、適切な運動や動作練習を行っています。また、退院後もご自宅で続けられる運動方法をお伝えし、日常生活での自立をサポートしています。体力や回復のペースには個人差がありますが、多くの方が手術から1週間ほどで基本的な動作を習得されています。 図6 階段昇降および床上動作練習の様子   3. 入院リハビリテーションスケジュール   4. 当院のリハビリテーションの特徴 ① 術前評価で備える  術前に身体機能を評価し、術後リハビリの目標を個別に設定。安心して手術に臨める準備を行います。 ② 翌日開始で防ぐ  翌日からリハビリを開始することで、血栓や筋力低下の予防、早期回復を目指します。 ③ 退院前に安心を  退院前教室を通じて、日常生活への復帰に必要な動作や注意点を確認。不安なく退院できるよう支援します。 ④ 退院後も支え続ける  退院後は外来リハビリで継続的にサポート。動作能力の維持・向上や日常生活への適応を一貫して支援します。 図7 退院前教室の様子   5. さいごに  人工膝関節の手術を受けた後のリハビリテーションは、機能回復だけでなく、快適な日常生活を取り戻すために重要なプロセスです。ご自身の身体の状態に合わせて、適切なサポートを受けることが回復への近道になります。膝関節の痛みや日常生活における膝関節可動域制限などでお困りの方は、一度診察にいらしてください。   執筆:病院理学診療部 北田和英 監修医師: 二宮太志   参考文献 1) 日本整形外科学会(監修). 変形性膝関節症 診療ガイドライン2023. 南江堂. 2023; 111. 2) Brian J Loyd et al. The relationship between lower extremity swelling, quadriceps strength, and functional performance following total knee arthroplasty.  Knee. 2019; 26: 382-391. 3) Armin H Paravlic et al. The Time Course of Quadriceps Strength Recovery After. Total Knee Arthroplasty Is Influenced by Body Mass Index, Sex, and Age of Patients: Systematic Review and Meta-Analysis. Front Med (Lausanne). 2022; 9: 865412. 4) Diane U Jette et al. Physical Therapist Management of Total Knee Arthroplasty. Phys Ther. 2020; 100: 1603–1631. 5) Jaehyun Lim et al. Effects of Resistance Training on Pain, Muscle Strength, and Function in Patients Undergoing Total Knee Arthroplasty: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2025; 14: 4979. 6) Armin H Paravlic et al. The Time Course of Quadriceps Strength Recovery After. Total Knee Arthroplasty Is Influenced by Body Mass Index, Sex, and Age of Patients: Systematic Review and Meta-Analysis. Front Med (Lausanne). 2022; 9: 865412. 7) Kristin J Konnyu et al. Rehabilitation for Total Knee Arthroplasty: A Systematic. Review. Am J Phys Med Rehabil. 2022; 102: 19–33. 8) Takaya Watabe et al. Preoperative factors associated with failure to achieve the minimal clinically important difference in quality of life following total knee arthroplasty. BMC Geriatr. 2025; 25: 476.  

2026.01.17

ふなせいコラム:膝

 

ジャンパー膝(膝蓋腱炎)のリハビリテーション

はじめに こちらのコラムでは、スポーツで膝の痛みがある方への対処法を理学療法士が解説いたします。 当院の解説 船橋整形外科病院は千葉県船橋市に所在し、”整形外科における専門医療の実践”を柱とした整形外科専門病院です。手術件数などの詳細はこちらをご確認ください。   〜目次〜 1. ジャンパー膝〜お皿の下が痛い〜 2. 原因〜なぜ痛くなるのか〜 3. 診断〜ジャンパー膝のみつけ方〜 4. 重症度分類〜どの段階まで進行しているか〜 5. リハビリテーション 6. さいごに   1. ジャンパー膝〜お皿の下が痛い〜  ジャンパー膝は、スポーツや部活動で繰り返される「ジャンプ」や「着地」を多く行う人にみられ、膝の痛みを主な症状とする障害です。特にバレーボールやバスケットボール、陸上競技(特に跳躍系)での発症頻度が多く報告されています。  本稿では、ジャンパー膝の原因や重症度の見分け方、効果的なリハビリ方法を解説します。 2. 原因〜なぜ痛くなるのか〜  膝のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)の下には膝蓋腱(しつがいけん)と呼ばれる、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)と脛(すね)の骨をつなぐ腱があります。この腱は、太もも前面の筋肉が伸び縮みしたときに、脛を引き上げたり下げたりします(図1)。   図1 膝の構造    また、着地からジャンプする際に力を貯めて放出する役割があります。ところが、急激な膝の曲げ伸ばしや、悪い姿勢での着地が繰り返されることで膝蓋腱に微細な炎症が起こり、膝の痛みにつながります(図1、写真1)。 写真1 悪い姿勢での着地 つま先が外を向き、膝が内を向く姿勢   原因には以下のものが挙げられます。 ✓硬い床面でジャンプ・着地動作の繰り返し ✓柔軟性の低下  (ハムストリングス、お尻、大腿四頭筋など) ✓急激な運動量の増加 ✓悪い姿勢での着地を繰り返す (写真1)   3. 診断〜ジャンパー膝のみつけ方〜 以下の症状・所見でジャンパー膝を疑います。 ✓膝蓋腱が押されて痛い ✓ジャンプやダッシュ、歩行や階段で痛い ✓画像所見(MRI・エコー等)  膝蓋腱の肥厚や炎症や変性が確認できる    骨折や骨の変形がないことを確認するために、レントゲン撮影も行います。   4. 重症度分類〜どの段階まで進行しているか〜 重症度は痛みの程度で分類されます。 ✓Roels分類   5. リハビリテーション  リハビリテーションの目的は、痛みの軽減と膝にかかっていた負荷を調節することです。膝にかかっていた負荷を下げるために、「どの動作で膝が痛むのか」を確認します。ダッシュやジャンプ、着地などの動作で痛みがある場合は、控えるよう説明します。  また、炎症による痛みが強く日常生活が制限される場合には、アイシングを15~20分程度実施します(写真2)。 写真2 アイシング   そして、膝蓋腱へのストレスを軽減するために、膝関節だけでなく股関節や足関節の柔軟性と筋力のチェックを行います(写真3~5)。 写真3 ハムストリングスの柔軟性チェック 写真4 お尻の柔軟性チェック 写真5 大腿四頭筋のチェック   リハビリ開始の段階では、柔軟性の確認とストレッチの処方を行います(写真6~8)。   写真6 ハムストリングスのストレッチ 写真7 お尻のストレッチ 写真8   大腿四頭筋のストレッチ    柔軟性、筋力を確認したあと、パワーポジションを確認します(写真9)。  パワーポジションは、素早く力を発揮したい時に体が最もスムーズに動ける姿勢のことです。ジャンプやターン、着地からダッシュなど、あらゆる動きの準備姿勢となります。  ジャンパー膝は、パワーポジションが崩れた状態で着地動作を繰り返すことなどで膝に負担がかかり、膝蓋腱に炎症が起こり膝の痛みに繋がります。パワーポジションの確認と修正は、ジャンパー膝の症状を軽減させるためにもとても重要です。 写真9 パワーポジションの確認   スクワット動作のチェック項目 1.正面 ✓肩のラインが床面と平行か ✓骨盤にある手のラインが床面と平行か ✓膝とつま先が同じ方向か 2.側面 ✓股関節で曲げられているか ✓体幹と脛(すね)が平行か ✓股関節と膝関節の動作のタイミングが合っているか 3.正面・側面 ✓足の裏の全面で接地できているか  (足先や、かかとが浮かないか)    さらに当院では経過に応じて、物理療法機器を利用した治療も行います。拡散型圧力波は慢性的なジャンパー膝に対し、徐痛効果と組織修復を目的として使用します(写真10)。 写真10 拡散型圧力波機器    ジャンパー膝のリハビリは、症状に合わせた治療や運動療法を選択し、必要に応じて物理療法機器を使用しながら治療を進めます。詳細につきましては、リハビリに来院された際に担当療法士へお尋ねください。   6. さいごに  ジャンパー膝は、重症化させないことがポイントです。また「段階的なリハビリテーション」を実施することで十分に回復が見込めます。「放っておけば治るだろう」ではなく、早期発見・早期対応が競技復帰の近道です。     執筆:船橋理学診療部 佐野求 監修医師:高橋謙二   参考文献 1)熊井司ら.軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション.MEDICAL VIEW.2022 2)石井慎一郎ら.膝関節理学療法マネジメント. MEDICAL VIEW.2018 3) 林典雄ら.整形外科運動療法ナビゲーション上肢.MEDICALVIEW.2014 4) 八木茂典ら.Anterior knee painに対する機能解剖学的運動療法-膝蓋腱周囲の痛みについて.整形外科リハビリテーション学会誌.2010 5) 八木茂典ら.ジャンパー膝の分類と運動療法.Sportsmedecine.2012 6) 東山一郎ら.ジャンパーの病態:骨梁構造,組織学的検討.臨床スポー ツ医学.2010 7)日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会.膝蓋腱炎(ジャンパー膝).2023 8) 中村利孝ら.標準整形外科学第10版.医学書院.2008  

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