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2025.05.09
目次
1. 上腕骨外側上顆炎とは
2. 上腕骨外側上顆炎の症状
3. 上腕骨外側上顆炎の病態
4. 上腕骨外側上顆炎の検査方法
5. 上腕骨外側上顆炎のリハビリテーション
6. 日常生活での注意点
7. さいごに
上腕骨外側上顆炎とは、上腕骨の外側上顆と呼ばれる部分に付着する手関節、手指の伸筋群(手首を反らしたり、指を伸ばす筋肉)の腱に炎症を生じ、肘の外側に疼痛をきたす疾患です。テニスやバドミントンなどのラケットを使用するスポーツでの発症頻度が高く、バックハンドストロークの際に手関節が背屈し、インパクトの瞬間に痛いため「テニス肘」とも呼ばれますが、日常生活動作や労働により発症することが多く、30歳代の後半から50歳代に多いといわれています。職業では、1㎏以上の重い道具を使う仕事や、20㎏以上の物を1日10回以上持ち上げる仕事、2時間以上の繰り返す動きを伴う仕事が本疾患に関連していると考えられています。一般的な生活習慣の人で0.8~1.3%、労働者では2.0~12.2%に発症します。
ほとんどの患者さんはリハビリテーション(リハビリ)、投薬などの保存的治療で改善しますが、難治性となり手術が必要になることがあります。船橋整形外科グループでは上腕骨外側上顆炎と診断される患者さんは毎年1000人程いますが、そのうち手術になるのは10人、1%前後です(2019-2022年上腕骨外側上顆炎と診断された外来患者4361人、手術件数47件)。
手を使った時に肘や前腕の外側に痛みが生じるのが主な症状です。タオルを絞る、物を持ち上げる、掃き掃除をするなどの動作が上腕骨外側の手関節伸筋付着部(手首を動かす筋肉が付いている部分)に最も負担がかかるため、痛みが生じることが多いです。
上腕骨外側上顆炎は、主に短橈側手根伸筋と呼ばれる筋肉の腱付着部症であり、炎症や変性、微小断裂が生じている事が痛みの原因になっていると考えられています(図1参照)。しかし、同部位を治療したのみでは症状がとれないこともあり、輪状靱帯の肥厚、滑膜ヒダによる障害、軟骨変性などの関節内病変の関与も報告されています(図2・3参照)。
図1 上腕骨外側上顆炎の病態
日本整形外科学会の診断基準は以下の通りです。①手関節への徒手抵抗にて肘外側に疼痛が生じる(写真1参照)、②外側上顆を押すと強く痛む(写真2参照)、③腕橈関節の障害など伸筋群起始部以外の障害によるものは除く。
診断基準以外によくみられる臨床所見は、チェアテスト、中指伸展テストなどの疼痛誘発テストです(写真3、4)。いずれかに当てはまる場合は、上腕骨外側上顆炎が疑われる為、早めの受診をお勧めいたします。
※補足事項
◎写真1
手首を反らした被検者(患者)の握り拳を、検者が抵抗を加えると疼痛が誘発されます。
<上腕骨外側上顆炎の検査例>
※補足事項
◎写真3
手首を反らした状態で、椅子を持ち上げた際に肘の外側が痛む場合、上腕骨外側上顆炎を疑います。
◎写真4
肘を伸ばした状態で、中指へ抵抗を加えた際に肘の外側が痛む場合、上腕骨外側上顆炎を疑います。
外来受診時の画像検査はまず単純レントゲン検査を行います。上腕骨外側上顆炎では石灰化像がまれにありますが、正常なことが多いです。変形性肘関節症、外側側副靱帯損傷などを鑑別するために行っています。難治症例に対してはMRIを行い、変性部の損傷程度、関節内病変の有無を確認しています。
熱感や腫脹を認める急性炎症期では、疼痛部位のアイシング(アイスパック等を使用して患部を冷やすこと)を実施します(写真5参照)。アイシングは1回あたり15分程度を目安とします。熱感、腫脹の軽減がみられても、肘関節の曲げ伸ばし運動での痛みが残存する場合は、痛みがない範囲で肘関節の自動屈伸運動や手関節を背屈する軽いストレッチングを行うことで関節周囲軟部組織の局所循環改善を図ります(写真6参照)。
写真5 アイシング
写真6 腕のストレッチ
また、上腕骨外側上顆炎と診断された方の多くは、肘関節の局所症状に加え、肩甲骨周囲の柔軟性が低下しているケースが多く、肩甲骨周囲の硬さが肘への負担を増やして痛みの原因となっています。肘関節の負担軽減を目的に、肩甲骨周囲のストレッチを行います。
(写真7参照)。
写真7 肩のストレッチ
さらに当院では、経過に応じてさまざまな物理療法機器を用いて症状に対応しています。
一例として、エコー検査機器(写真8参照)を用いて、圧痛部位の確認や筋肉・関節の動きを観察し、拡散型圧力波(写真9参照)を用いて症状の改善を図ります。
拡散型圧力波は、即時的な除痛効果と遅発的な組織修復効果があるとされ、上腕骨外側上顆炎に対しても効果的であるとされています。拡散型圧力波を施行し、1回目から症状の軽減を認める場合もありますが、2回目以降に症状の変化を自覚される場合も多く見受けられる為、効果判定を行いながらリハビリプランを検討していきます。
写真8 エコーを使用した検査例
写真9 拡散型圧力波の治療例
その他、上肢の筋力が低下していることが原因で、肘関節に負担がかかっている可能性も考えられます。このように、上腕骨外側上顆炎のリハビリにおいては、病態に応じた運動療法を選択し、必要に応じて物理療法機器を使用しながら治療を進めていく必要があります。詳細につきましては、リハビリに来院された際に担当の理学療法士へお尋ねください。
できる範囲で肘関節、手関節、手指の使用頻度を減らすように心がけることがリハビリを進めるうえで重要です。痛みが伴う動作は損傷部位に負担がかかっているので、なるべく控えるようにしましょう(写真10参照)。
写真10 デスクワークでの負担軽減方法
※補足事項
◎写真10
長時間のパソコン作業を行う際は、肘関節への負担を軽減する為に、前腕の腹側にタオル等を敷くことで、手関節背屈保持を軽減し、肩甲帯や上肢の過活動を抑えることができます。
上腕骨外側上顆炎は上肢疾患の中で比較的多く見受けられる疾患の1つです。日常生活や、仕事での使いすぎによって症状が悪化するので、受診が遅れると慢性化する恐れがあります。
当院では船橋整形外科クリニック、西船クリニック、市川クリニックの3施設において、理学療法士が身体の状態を個別に評価し、一人一人に即したリハビリを提供させていただいております。安易に放置せず、早めの受診をおすすめいたします。
執筆:市川理学診療部 梶山裕太
監修医師:松葉友幸
参考文献
1)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会.上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019.南
江堂.2019
2)中村利孝ら.標準整形外科学第10版.医学書院.2008
3)一般社団法人日本理学療法学会連合.理学療法ガイドライン第2班.医学書院.2021
4) 林典雄ら.整形外科運動療法ナビゲーション上肢.MEDICALVIEW.2008
5)相澤純也ら.整形外科理学療法ベストガイド.中外医学者.2018
6)日本運動器SHOCKWAVE研究会.
7)大歳憲一ほか:上腕骨外側上顆炎の疫学と保存療法.整形・災害外科,2020;63:1749-1756.
8)村田景一ほか:上腕骨外側上顆炎に対する鏡視下・直視下手術併用療法.整形・災害外科,2020;63:1811-1816.
9)Mullett H, et al. : Arthroscopic treatment of lateral epicondylitis ; clinical and cadaveric studies. Clin Orthop, 2005; 439: 123-128.
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