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2026.02.24
本稿では、当院におけるにラグビー・アメフト選手における肩関節脱臼ついて紹介します。
(肩関節脱臼についての概要はこちらから)
〜目次〜
1.肩関節脱臼とは
2.ラグビー、アメリカンフットボールにおける肩関節脱臼
3.当院を受診したラグビー、アメリカンフットボール選手の傾向
4.肩関節脱臼の治療
5.具体的なリハビリテーション
6.さいごに(引用)
肩の脱臼とは、腕の骨(上腕骨【じょうわんこつ】)が、肩甲骨の受け皿(関節窩)から外れてしまった状態のことで、多くの場合、けがによって起きます(外傷性脱臼といいます)。 肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇がはがれて関節を支えている靭帯が弛みます。これをバンカート損傷と呼びます(図1)。このバンカート損傷の多くは自然には修復されず、関節の緩みを引き起こし脱臼・亜脱臼を繰り返します。これを反復性脱臼といいます。

タックルを中心とした接触プレー、転倒による地面への肩の接触や手をついた際に起きることが多い怪我です。1) 2)肩関節脱臼は受傷すると競技ができない期間が長く、反復性脱臼となりやすい厄介な怪我でとされています。3)4)5)6)
当院で2012年から2022年で肩関節脱臼の手術を受けた選手に対しての調査では、ラグビー選手では約60%、アメリカンフットボール選手では約80%の選手がタックルで受傷しています。また、ラグビー選手ではポジションでの大きな違いはありませんが、アメリカンフットボール選手では競技ルール上タックルを行うのがディフェンス時のみであるため、ディフェンスポジションの選手に受傷が集中する傾向があります。
2012年8月から2024年8月までに当院を受診したラグビー、アメリカンフットボール選手の怪我の部位の内訳となります。肩関節周囲の怪我で当院の上肢グループ医師の診察を受けている選手が多いのが当院の特色です(図2,3)。


手術をして復帰を目指す方法と、手術しないで復帰を目指す方法の2つがあります。
まずは手術を行う方法について説明します。ラグビー、アメリカンフットボール選手では初回脱臼の時点で手術療法を選択することがあります。当院では鏡視下バンカート修復術に加え関節損傷の程度によりいくつかの補強を加えています(以前のふなせいコラムを参照ください)。手術後のリハビリテーションの流れは、術後3~4週間は患部の保護のため装具を着用します。装具が取れた後、手術後3か月までは関節の可動域の回復を主に行います。術後3か月以降に肩関節を含めた上半身筋力トレーニングを再開して、術後4か月でタックルダミーや動いていない相手へのコンタクト練習を再開します。術後5カ月からリアクションする相手へのコンタクト練習を再開し、術後6か月での競技完全復帰を目標に進めます。
次に、手術しないで復帰を目指す方法について説明します。手術をすると復帰までには約半年の期間が必要となるため、学生選手などで、手術では最後の大会までに復帰が間に合わない場合や、肩関節に骨端線(こどもの骨の末端で、新しい骨組織を作り出して骨を伸ばす成長線)が残っている成長期の選手7)、手術を希望しない選手などは、リハビリテーションでの復帰を目指します。リハビリテーション期間は約3か月となります。リハビリテーション開始から約1か月半までは可動域の回復および筋力の回復を目指します。1か月半~2か月でタックルダミーや動いていない相手へのコンタクト練習、2カ月半でリアクションする相手へのコンタクト練習を再開して3か月での復帰を目指します。
再脱臼を予防するために非常に重要なポイントは多くの選手における受傷原因となるコンタクト動作(主にタックル動作、アメリカンフットボールではタックル動作に加えてブロック動作)に対して対策を立てることになります。危険なタックル動作では、腕だけでタックルしてしまうタックル(アームタックル)がよく言われています(図4)。1) 8)また、衝突する接点には約2000N、約204kgfで、瞬間的に約200kgの負荷がかかります。9)選手の体格や競技レベルで左右されますが、接触点が上腕側にずれるほど肩関節にかかる負担は倍増します(図4)。

当院のリハビリテーションでは、タックル動作を接触する前、接触した瞬間、接触後で分けて考えます。10)11)それぞれでポイントとなるテクニックがあり(図5~9)、それらがほぼ無意識のレベルでできるように反復します。12)13)14)テクニック改善のために必要な体の機能は、肩関節にとどまらず全身、特に体幹・下半身の筋力に影響されます。





ラグビー、アメリカンフットボール選手における肩関節脱臼は一度受傷してしまうと競技に大きな制限をかけてしまう怪我です。当院では肩関節脱臼の手術とその後のリハビリテーションも多く手掛けています。また、個々の選手の事情で手術が出来ない場合もリハビリテーションで症状をコントロールできるようにサポートしていきます。全例ではありませんが、両肩が反復性脱臼となった選手がリハビリテーションを開始してそれ以降は脱臼せずにプレーが出来ている事例もあります。肩関節脱臼で困っているのであれば当院の専門医をぜひ受診して下さい。
執筆:船橋理学診療部 宮坂 祐樹
監修医師:高橋 憲正
引用文献
1) Crichton J et al. Mechanisms of traumatic shoulder injury in elite rugby players. Br J Sports Med. 2012 Jun;46(7):538-42.
2) Montgomery C et al. Video analysis of shoulder dislocations in rugby: insights into the dislocating mechanisms. Am J Sports Med. 2019;47(14):3469-3475.
3) Usman J et al. Shoulder injuries in elite rugby union football matches: Epidemiology and mechanisms. J Sci Med Sport. 2015;18(5):529-33.
4) Headey J et al. The epidemiology of shoulder injuries in English professional rugby union. Am J Sports Med. 2007;35(9):1537-43.
5) Kawasaki T et al. Incidence of and risk factors for traumatic anterior shoulder dislocation: an epidemiologic study in high-school rugby players. J Shoulder Elbow Surg. 2014;23(11):1624-30.
6) Leclere LE et al. Shoulder instability in professional football players. Sports Health. 2013;5(5):455-7.
7) Li X et al. Management of Shoulder Instability in the Skeletally Immature Patient. J Am Acad Orthop Surg. 2013;21(9):529-37.
8) Maki N, Kawasaki T, Mochizuki T, Ota C, Yoneda T, Urayama S, Kaneko K. Video Analysis of Primary Shoulder Dislocations in Rugby Tackles. Orthop J Sports Med. 2017;29;5(6):2325967117712951
9) Usman J et al. An investigation of shoulder forces in active shoulder tackles in rugby union football. J Sci Med Sport. 2011;14(6):547-52.
10) Burger N et al. Tackle technique and tackle-related injuries in high-level South African Rugby Union under-18 players: real-match video analysis. Br J Sports Med. 2016;50(15):932-8.
11)Hendricks S et al. Tackler characteristics associated with tackle performance in rugby union. Eur J Sport Sci. 2014;14(8):753-62.
12) Posthumus M et al. BokSmart: Safe and effective techniques in rugby union. S Afr J Sports Med.2008;20(3):64-69
13) Kawasaki T et al. Kinematics of Rugby Tackling: A Pilot Study With 3-dimensional Motion Analysis. Am J Sports Med. 2018;46(10):2514-2520.
14) Horsley I, Herrington L, Hoyle R, Prescott E, Bellamy N. Do changes in hand grip strength correlate with shoulder rotator cuff function? Shoulder Elbow. 2016;8(2):124-9.